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「悪くないだろ?」
 君は眩しい光に目を眩ませながら言った。僕は何も言わなかったけれど、悪くはないと思った。寝起きで現実と夢の中を彷徨って、これがどちらか区別がつかなかった。
 影山が表情を緩めているから、大方夢なんだろうと思っていた。君がこんな風に僕に笑いかけることなんてないから。
 影山はカーテンを握ったまま離してない。朝日を見終わるまで動かない気がした。毎日のように影山は見ているはずなのに、それでも特別さを一つもなくしていないように尊く見ている。
 僕は朝日と影山を一つにして見ていた。そんな影山が朝日と同じくらい神秘的に見えた。光に飲み込まれそうだ。
 光はとても暖かい。少し寒い秋の朝では、僕の体は自然と熱を心地よく感じていた。
 僕はベッドから立ち上がり、影山の傍に行く。その頃にはぼやけていた意識もしっかりしていた。
これが夢じゃないということは日光が目から入り、足の先まで伝わった頃に気づいた。少しだけ時間が掛った。
「そんなに見ていると、飲み込まれてしまいそうだよ」
「そんなに集中していたか?」
「うん。僕からみたらね」
 影山は朝日から目を反らし、握っていたカーテンを離した。
「いつもはどのくらい見ているの?」
「さぁ、意識はしてないな」
「じゃあ既にもう飲まれてたんだ? 見ている時は、僕がいることを忘れている顔をしていたよ」
「癇に障ったか?」
 そうだとしても構わない風に影山は聞く。
「別に」
「ならいいだろ?」
「ああ。それに、僕も君と同じような感覚に陥っていたから」
 君は朝日に飲まれていたけれど、僕は朝日に飲まれている君に飲まれていたんだ。君の体全体に光が射したのを見て、今にも溶け込んでいきそうなのも、あるのかもしれないって。
「また、起こしてよ。いつもは煩わしい日の光も、待ち望んで見てみると悪くない」
 君は日光に映されて光る粒子の中で、口を結んで笑った。とてもそれが綺麗で僕はつられて笑ったんだ。
                                        

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