白にはなれない


彼が……と目を配らせると、とても目付きが悪いから驚いた。
 一度、中学の頃の影山の試合を見たことがある。見に行ったんじゃなくて、新聞で。だけど、写真で見ただけなのに、やっぱり王様が自分のコートの仲間を、見下していることがよく分かった。蔑むような顔で、仲間を見ていた。
 あの顔を見てから僕は、彼のことが一番に嫌いになった。
 なのに、同じ学校でまさか一緒に部活をするなんて、思いもしなかった。
 出来るだけ傍にいたくなかった。彼の目付きは嘘をつかないから。
 だけど、いざ学校に入ってみると、あれ? と思うぐらい大人しくなって、あの、人をどん底に落としえる目付きをしなくなっていた。
 人をあれだけ傷つけた癖に今さら。
 僕が彼に与えられるものは負でしかなく、彼が変わり始めていても、それが僕にとっては、善を演じているようにしか見えない。
 嫌いだけど、彼が気になる。彼が持っている、誰もが持っている汚いといわれるものを。
 それをもう一度、今度は僕が、はっきりとこの目で見てみたい。
 それから僕は影山にわざと苛立つことを言うようになった。
 彼は僕のことを相手にしない。
 それって、本心を避けているんじゃないかな?
 けれど――王様。唯一、その単語を言うと彼は怒る。
 あの時の目で、僕を刺すように睨んで、切り刻む。
 僕はそれが心地よかった。それが彼な気がして。
 彼は逸らしている。過去の自分を。
 僕は知りたい。彼が持っている塞ぎこんでいるものを。
 何重も黒の上に他の色を重ねているものを、全て洗い流して混ぜてやりたい。
 汚くなった色と黒は何故か近いものを感じるのは何故だろう?
 その色がもう、白というものになることはないからだろうか。
 

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