彼が僕を殴った。滞りなく出ていた、彼を傷つける為だけしかない意味の単語は、ようやく僕の口から出なくなった。そして、息を止められた。そんな気分にもなった。
傷つける、言葉。僕はそれだけを選択して、発した。一つ一つの言葉の重さなんて、いくら持ち上げても綿のように軽いものとしか思わずに。ふわふわとしている。僕自身もそう。なにも分かっていない。
狭い部屋。ただの置き去りの僕。丁度いい空間。
彼は僕を見ずに、去っていった。僕はずっと彼を見ていたというのに、振り切るように僕達にはあまりにも小さい玄関から出て行った。
僕は殴られた頬をさする。与えられた痛みに重さを感じる。じわじわと広がる、彼を感じる。不思議と満足感。忘れ物を彼はしている。きっと戻って来るはずだ。
だって、これが現実でしょ? 逃げ切れない。二人で一つのこの部屋を借りた時から、分かっていたことだから。
でも、この部屋はあまりにも狭すぎたかもしれないね。
僕のつまらない考えだって、浮かんではすぐにぶつけることができてしまう。今だってそうだったから。
だから、宙だっている僕に、もっと現実的に見えるように重さをつけて落としてよ。だって、この部屋からすぐにステップよく出て行きそうになるからさ。