判断

  愛しているなんてよく言えたもんだ。目を逸らさず、自分の意志に忠実で迷いもなく、そんな言葉が言えたことに緑間は感心した。
 その言葉が本当か嘘かは分からないが、嘘だとは到底思えない言い方だった。
「言葉なんて、所詮脆いものだろ。真ちゃんが欲しいならいくらでも言ってあげるよ。こんなもんでよければいくらでも」
 ベッドの上でまじまじと瞳を見つめられる。逸らしてしまいそうだった。強く真っ直ぐな高尾がなぜこんな自分をそこまで愛してくれるのか理解が出来ない。
「お前が思っているほど俺は完璧じゃない」
 そう視線を逸らしてしまった。これは高尾を裏切ってしまったことになるのだろうか。
「完璧じゃなくてもさ、いいぜ。不確かなものでもそれでも俺を好きでいてくれるなら。少しだけでもそういう感情があるだけで」
「俺にはまだ分からないのだよ」
「じきに分かる」
 分からないといけないのだろうか、こんなに胸が苦しいというのにまだ痛みを伴わければいけないのか。
 だめだ。区別がつかない。この胸の痛みは高尾のことが好きだから痛いのかそれとも高尾の愛に応えてやれないからか。
 もし真っ直ぐと視線を逸らさず高尾見ることができたなら、その時答えはでているのだろう。

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