「ほーんと、何でもできんだね。アンタ」
まるで出来て当たり前のことを、一つ一つただこなせば、周りからはそう言われるようになっていた。緑間はそう言われ続けて、どこか距離を持つ奴らが好きではなかった。
異物を見るような目。
「何でも出来るのが羨ましいか?高尾」
「そりゃもちろん」
簡単に作ることが出来るお得意な笑顔をする。 緑間はそうかと言うと、コートの一番端からシュートを打つ。ボールは半円を描き、ゴールの中に音もたてずに入る。
完璧なほどにこれ以上良いものはないというシュートだ。
「でもさ、そんなんじゃつまんないだろな」
「俺はそういうものを求めてはいないがな」
じゃあさ、と高尾は言い掛ける。
「真ちゃんは何を求めて俺といんの?」
求めてなどないのだよ、と言えば、なら俺は暇つぶし?と聞かれ、そうでも無いと答えれば、じゃあ、俺は真ちゃんの何?と聞かれ、今度は口を開くことなど出来なかった。
高尾が造り笑いを消すことなく聞いてきたのは、空気を濁すことなく答えを知りたかったからかも知れない。
答えを知るも何も、高尾が思っているものこそが答えなのに。
それを緑間は言わない。
言わなければ答えが返ってくることもない。
「俺はひまつぶしには役にたててる?」
「ああ」
「それは良かった」
お互いが答えを言おうとはしない。
気持ちを言葉にした瞬間、それが答えとなってしまうから。
まだ自分達の関係には名をつける必要などない。
だけど答えが気になるのは自分というものが、どれだけ相手の重りとなっているか知りたいから。
相手の中の自分は一体どれだけ支配しているのだろう?
恐い癖に聞こうとする、まだこの想いが軽いのならばその答えが何であろうと打ち捨てることができるのに。
結局は意地の張り合いだ。
それはまだ始まったばかりだが、終わりもいつくるか分からない。
さあ、どうしようか。