振り返る(3)

 背中の傷跡は治ろうとしても、俺の爪がその箇所に食い込み、瘡蓋は何度も張り替えられる。痛々しい。でも、その傷跡は愛しいような気がしてならない。嘘じゃない。それはそこに存在しているのだ。この行為が成されたことが、照明され、傷跡が増える度に俺は成果を得たような感覚に陥る。
 飛雄の背中を舐める。飛雄は「ふぁっ!」と間抜けの声を出した。達したばかりなのに、感度がいい。鉄の味が舌に染み込む。
「チームメイトに何か言われたりしない?」
「タンクトップ……で、隠れ……ますから……」
「丁度、女の子にやられたみたいだもんね。男の勲章だ。でもそれが、俺に苛められてつけられてるなんてさ」俺は笑いを含めた声で言う。「情けない」
 飛雄は黙る。つまらないと、俺は傷跡を再び舐める。ビクビクと体を震わせる。「もう……やめて下さい……」
「綺麗にしてあげてんじゃん」ぺちゃっと聞こえる音は、淫縻で気分を高揚させる。あ、これ意味ないことしたかも。
 痛めつけられて苦しいはずなのに、そこを舐められると酷く沁みて、他の箇所よりも感じてしまう。もしも治ってしまったら、この快感は無くなるけれど、飛雄はどうがいいのかな? 飛雄の体は傷つけられることも、優しくされることもどちらも望んでいる気がする。
「……二回目、はじめよっか」俺は舐めるのをやめ。飛雄の耳元で囁いた。飛雄は顔を赤くして、目を瞑った。

 

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