振り返る(2)

 繋がっている場所の熱が熱い。入れてから結構経ったはずだ。たっぷりと掛けた潤滑油がドロドロとしていて、俺と飛雄に沢山絡みついている。汗も沢山流れている。目に入って痛い。それをこすって飛雄を見てみると、耐えるように目を瞑って息を荒くしていた。そうか。自分じゃあ、拭けないもんね。塞がっている両手は頭の上に置いてある。俺はもう押しつけてはいない。その格好が楽なのだろうか。
「最高の快楽を得る為には、最高の我慢が必要だ」と俺は語り掛ける。「まだだめだよ? 肝心な一回目なんだから」
達しそうな飛雄の性器を指で一撫でした。
「あっ!」飛雄は驚いて体を跳ねさせる。勢いで開いた目で俺に訴える。早く……と。
「だから、駄目だって」俺は苦笑を浮かべた。
 飛雄の腕が紐を引きちぎろうとしている。逃げようとしているのではなく、痛みで誤魔化そうとしているんだろう。
「はぁ……はぁ……」
 落ち着く為に呼吸は一定のテンポをとろうとしている。それを乱す。
「はぁ! ……あ! あぁ!」
動いてやるとすぐに呼吸は乱れた。何回か深く動いては飛雄が達しない程度を見極める。繋がっている所が震えている。ヒクついて欲しくて堪らないのだろう。
 俺も我慢していた。飛雄がせがむのを理性で止めていた。性器が今にも出したいとパンパンに膨らんでいる。
 俺は飛雄のはだけたシャツに両手を入れると、赤くなっている乳首を弄る。
「んんっ……あ……あ……」と気持ちがいいのか柔らかな声を出す。表情も先ほどよりはほぐれて眉が下がっている。肩の力が抜け、なにも考えられないのか、ぼーっと俺の方を見る。
 もうそろそろかな。
 俺は飛雄の唇に軽く、ちゅっと音を立てキスをする。そして再度、また唇を合わせる。今度はゆっくり。唇のなかに舌を侵入させる。
 飛雄は簡単に口を開いた。俺は逃げ腰な飛雄の舌を追いかける。唇を動かし、舌を追い詰めて、こすった。
「ん……はぁ……」唾液が飲み込めず、横から垂れた。
 舌を俺の舌と絡めさせる。ぺちゃ……ぺちゃ……と水音を響かせる。乗り気になったなと俺は確信すると、止めていた腰を急に動かした。
「んんっ!」声を出そうとも俺に唇を塞がれ出せない。抜けていた肩に力が戻った。
 俺は唇を離す。
「はぁ……はぁ……」と呼吸を整える。「もうイっていいよ。でも俺が終わるまでは付き合ってよ」
 俺は飛雄を向き合うように抱える。体を俺にのっかかるように預けている。飛雄の塞がれた手は俺の首を通して背中に置く。俺も飛雄のシャツに手を突っ込んで背中を持った。
「動くからね」とベッドのスプリングを利用し弾んでいく。
「あっ! あ!」
 飛雄が耳元で鳴く。つなぎ目からも同じリズムで音が聞こえた。
 俺は腰を奥まで打ちつける。最初はゆっくりだったペースがだんだん早くなっていく。
「あぁ! あぁ! あぁ! もう!…… 出る!」
必死に飛雄は訴える。背中を強く抱きしめられる。
「……いいよ。俺も……」
 俺も飛雄の背中を抱き寄せた。強く爪で背中を抑えると、一度大きな声を上げ、飛雄は達した。そしてそれが合図のように締め付けられ俺も達した。
 
 

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