wound

 綺麗な唇を噛んでしまえ。血を流させて綺麗なんかじゃないようにしてやる。それでもやっぱりだめだ。先輩は俺の中じゃ綺麗なものでしかない。
やっていること全て本当に汚くて哀れなのに、もう、俺の中じゃ綺麗なものにしか見えないんだ。
「だから先輩がぐちゃぐちゃになっても俺は先輩を綺麗と思えるッスよ」
「よく言えるぜ。勝手に俺様に傷作りやがって、傷なんかない方がもっと綺麗に決まってるだろぃ」
「自分がさ、傷をつけた方がもっと綺麗だと思えるんスよ。ほら、あれだって。マーキング?」
「痕残ったら殺す」
「いいよ、責任なんか簡単でしょ」
 俺がその傷の何十倍も愛してやればいい。欲しいならいくらでもやるから俺を求めて欲しい。
俺じゃないとだめだと言って欲しい。その傷は綺麗だよ。だけど他の奴には綺麗じゃなくていいんだ。むしろ汚くていい。だから愛をあげる俺の所だけに帰ってくればいいんだ。他の奴の所なんか行かなくていいんだ。
 俺は先輩が傷だらけでも、それが俺がつけた傷ならば綺麗にしか見えない。



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