体温


 

 触れる度に思う。女みたいな中性的な顔をしている癖になぜこんなにも男らしく、女みたいな女々しさがないのだろうと。
 それは都合が良かった。
 まるで気の合うような女と一緒にいる気がする。普通の男ではありえないことだ。
だが、考えていることが分からないことと、何をするにも気持ちが読めないことは気にくわなかった。
「これいる?」
「いらない」
 ブン太が好きなお菓子を目の前に持っていくと、ベッドに俯けになって枕に顎を乗せているブン太はそれを見ているわけでもないのに言った。
「見てもないのによく言えるね」
「お前がなんか持って来るときは、どうせろくなこと言い出さないから」
 だるそうに言った。
「そんなこと、まだ言ってもねーのに」
「わかんだよ。考えてること」
 俺は考えていること分かんねーのにな、そう赤也は思った。
「赤也、一体どうして欲しいんだ?」
「考えてること分かるなら、当ててみてよ。センパイ」
 そう意地悪く笑うと、ブン太は首に腕を回し引き寄せた。
言葉にしてないけれど分かったのだろう。また知られてしまった。
「本当に先輩は俺のして欲しいこと分かるんスね」
 今、抱きしめて欲しいと思った。何かあったわけでもないけれど無性にそう思った。
偶にそんな時がある。無意識に温もりを求めてしまいたい時が、そして全部を受け渡してしまいたいような、そんな時が。
しかしこの温もりは偽物で、本当の愛では無い。
けれど、そう思っているのにとても愛しくなってしまう。
偽物でも温もりを欲しいと思っていてしまうのは、ブン太が自分と似ているからだろうか。
似ているから、こんな人間は自分だけじゃないと安心しきっているのだろうか。
 ひと時だけの安らぎ。
「もう俺だけにしとけばいいのに」
「ばーか。そんなことしたらみんな悲しむだろーが」
 冗談でお互い笑いながら、手なれた手つきで服を脱がす。そして手なれた様にキス。そろそろ飽きたっていいはずなのに、お互いがそう思っていないみたいで、時間だけが去っていく。









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