子供の様に


  それでも愛しいと思う。

 変わらない日常に変わらない自分。置かれた自分の物ではない、ブン太の香りが染み付
いている服。それを見る為に胸が痛くなる。ああこんなにも愛しすぎてしまった。隣にい
る残像さえ見えてしまって、頭を撫でようとすると触れることなく消えていく。いつもな
らブン太が笑ってキスをして、そしてキスを優しく返して一緒に笑い会うのに。
「…別にさ、いーじゃん休めば。駄目なの?」
「駄目。仕事だぜ?学校とかと違うだよ。」
「何で日曜日に仕事あるんスかー」
「はいはい、駄々こねるな。」
 そう言って頭に乗せられた手の感触がまだある。しょうがないって笑う顔が好きで、子
供みたいに駄々をこねた。でもそのおかげで今日も置かれた服を取りに来る為に家に来る
だろう。年齢何て子供の内は酷く邪魔くさいものだ。そのせいで余計な悩みが浮かんでき
たり、やりたいことでも規制される。実感する。自分がまだ子供であるということを。
 言葉や想いを伝えても、足りないものはいくつもあって、それを求めても覆す程の権力
は無い。好きだとただ浮かんでくる。誰の物でも無かったブン太が唯一自分の手を握って
くれたことが嬉しい。自分が守らなければと思うのに気持ちだけが先走る。

 ああ、それでも好きだと伝えきれない気持ちが溢れてく。 今日も言おう。好きだと言って、
愛してると呟いて、そして駄々をこねよう。そうしたらきっとまた明日も隣に来てくれるは
ずだから。





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