愛してるよ。好き、大好き。
そうやって嘘か本当か分からない気持ちを、言葉にして信じさせようとする人間はたくさんいた。だから俺はそれを信じたふりをして、騙されたふりをして、体の関係に持ち込むんだ。
身体を繋ごうとする瞬間は大体の人間が欲望丸出しで、なんとも情けない。抱く時も抱かれる時も、その人間の様子を俺は心の中で嘲笑っていた。
でもそんなことを決して分からない様に、その人間が求めている人物になりきった。拒否などほとんどせずに俺は応じた。
愛しているからね。
頼みごとをされる時には必ず言われる、もう慣れきった言葉。歪んだ頬笑みは、目は笑わずに口角だけが上がっている。
乱暴に抱かれ、抱いた。終わった時には押さえつけられた痣や女に噛まれ肩から血が出ていることもあった。
俺は騙されて可哀想と、その人間に思われているのだろう。後ろめたく離れていく人間は何のために近づいてきたのかを、自分でした行為なのに分かっていない。
簡単なことだ。
手が届かない人間を自分のものにしたい。
行為をした場所に置き去りにされるのが、もはや当然となっていて、目を開けると何も残っていない。
身体には悲惨なほど色々なものが残っているというのに。
「先輩、しようよ」
お前もそんな人間と同じなのか。俺は赤也に何も話していない癖に決めつける。
近づいてくる手を跳ねのけようとはせずに安易に触れられる。鼓動は空しく脈打ち、涙を出せない変わりに瞳が曇る。
同じ様に俺は感情を消して演じようとする。
「好きだよ」
感情を消して曇っていた瞳から一粒、大粒の涙が出た。
言われ慣れているはずなのに。
身代わりにしていたのは俺じゃないか。