勝手に好きなだけ。
この恋愛は自分の思い込みでしかない。
赤也がそう心に唱え始めていた頃には、既にブン太という一人の人間が胸をかき回す存在になっ
ていた。
相手には気なんてないのに、優しくされただけでこんなにも胸が熱くなる。他の人間との扱いと
同じなのに、それなのに自分だけは特別なのだと体が反応してしまう。
意識を逸らそうと違うことを考えてみても、顔は残酷なほど自分の気持ちを表わしていて、相手
にも気付かれたのではないかと思うほど顔が赤くなる。
気付いているならば、なんで扱いを変えてはくれないのだろう。冷たくしてくれれば、想いの区
切りが付けるのに。
勝手に相手のせいにしてみても、そんなこと本人に言えるわけがない。
今日も変わらず、ブン太は笑っている。
赤也の前でも変わらず、笑っている。
捨てきれない気持ちが、中途半端に留まって嫌に行動を起こしてしまう。
冷えないこの熱は、どのように冷ましてしまえばいいのだろう?
冷え切った熱は相手に何を残して消えていくのだろう?
恋も、愛も、複雑すぎてまだ知りたくなかったのに。
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